烙印の紋章 ―たそがれの星に竜は吠える

■独断偏見ミシュラン:★★★☆☆

内容紹介で興味を持ち購入。著者の作品はワーズワースの放課後から読んでいるがなかなか面白いと思う。
主人公であるオルバの心情の描写に挽きこまれ、とても面白く詠み進めることができる作品でした。剣闘士というもの、皇子の影武者を演じるオルバ、皇子の婚約者であるビリーナとの駆け引き、メフィウス・ガーベラ・エンデの三国の闘争と緊張関係、皇子を演じる目的が復讐へと変わっていく瞬間、そういったものが織り交ざって良い交響曲を奏でています。
特に、皇子が入れ替わる主導権をシモンでなくフェムドが持ったことで(もちろん、フェムドでなかったらオルバが影武者を演じることがなかったのですが)、運命が皮肉な方向へ向かっていくところがいっそ痛快です。
三国の微妙な関係がどう動いていくのか、ビリーナの皇子を意のままに操るという謀略の行方、そしてオルバの復讐の先に何が待っているのか、さまざまに続刊が楽しみな1冊になりました。


■今日の決めゼリフ

「なるほど、尊く生まれついたお方は、民草とやらの命をすべてお握りになっていられるわけだ。どうやって生かすか、どうやって殺すかも自由自在。王族の言う誇りなど、取った、取られたのゲームをするのに都合の良いルールに沿った言葉でしかない。個人の喜びを殺すだと?その個人の考えだけで100人、1000人、1万人と駆り集められ、殺し合いをさせられる人間の喜びとは、じゃあ、いったい何だ!」(by オルバ)
ビリーナの王族に関する義務の言葉への反論。あくまで王族としてあるビリーナと、いまは皇子を演じているものの、剣闘士という社会の底辺に暮らすオルバの考え方の違いが衝突しての言葉が、なぜか印象に残りました。


ミシュランの星
:死ぬまでにあと1回読めばいいか…。
★★:普通に面白い。2年に1回再読したい。
★★★:結構面白い。1年に1回は再読したい。
★★★★:非常に面白い。やることないなら再読したい。
★★★★★:最高!聖書代わりに枕元に必携。