千の剣の舞う空に

千の剣の舞う空に (ファミ通文庫)

千の剣の舞う空に (ファミ通文庫)

■独断偏見ミシュラン:★★★☆☆

ファミ通文庫えんため大賞第9回優秀賞受賞作品。内容紹介とイラストで興味を持ち購入。
オンラインゲームという虚構と高校生という現実の狭間でのボーイミーツガールということで、一瞬「バトルフィールドは空騒ぎ(ファミ通文庫刊)」を思い出しましたが、まったく違います。
最初の方は、こういう設定にしてしまうとありがちですがオンラインゲームの世界観やシステムの説明が主になってしまい、すんなりストーリーに入っていけないため、ちょっとどうかな?と思いました。なので、★3つですが、気持ちでは★4つ。
しかし、速見と鷲尾が出会ったあたりから俄然、目が話せなくなります。冒頭にあった主人公の挫折。中盤に向けての明日美の過去話。そうした伏線がここを機に一斉に動き出す気がします。
さらにストーリーにいいアクセントを加えるのが永井の存在とその過去。
そして、最強を目指し過去の自分を取り戻すためにゲームに打ち込む主人公、アスミの正体が明日美だとわかっていても言い出せないもどかしさ、現実の二人の関係とゲーム内での二人の関係がやがて収束していき、お互いに正体がわかっていても別れの時はやはり「闘って別れる」という選択をする二人が、なんとも言えず、ジーンと来ます。 
それでもお気に入りキャラは杉田さん。
また、一人で過ごし、他人との間に壁を作っていた主人公の心理的変遷というか成長というかが良く出ています。読み終わったあとに、胸に残るものがありました。著者の次回作も楽しみにしたいと思います。


■今日の決めゼリフ

「闘おう」(by 真山明日美)
真一の最後にかけようとしたことばを先取りした明日美の言葉。明日美が真一の正体を気づいているとは思わず、意外性のある言葉。そして二人の別れに相応しい言葉ですね。


次点「でもね。またね、ってことは終わりじゃないってことでしょう。一度目に出会ったのは偶然で、二度目の再会なんて望みもしてなかった。お互いにね。でも、私たちにはきっと三度目がある。私と明日美はいつかまた、どこかで出会うのよ。だって、そいう意志があるんだから」(by 永井文香)
このキャラがいなかったら、ここまで感動的な作品はなってなかったなと思う。自分の意志というものの大切さを教えてくれるキャラですね。次は友達としてお互いが望んで会う。過去の経緯からジーンとくるセリフです。


次点「宿敵と書いて、とも、と読む。そういう奴だよ」(by 速見真一)
鷲尾に明日美との関係を聞かれてこたえる真一の返答。まさにピッタリ。結局最後まで二人の関係は恋人ではなく、クラスメイトでもなく、まさに宿敵同士だったんでしょう。


ミシュランの星
:死ぬまでにあと1回読めばいいか…。
★★:普通に面白い。2年に1回再読したい。
★★★:結構面白い。1年に1回は再読したい。
★★★★:非常に面白い。やることないなら再読したい。
★★★★★:最高!聖書代わりに枕元に必携。