らじかるエレメンツ

らじかるエレメンツ (GA文庫)

らじかるエレメンツ (GA文庫)

■独断偏見ミシュラン:★★★★

とりあえず読むものもなく、ラノベ新刊コーナーを眺めていたら目に付いたので買ってみる。決して虎の穴特典メッセージペーパーに釣られたわけではない…。
自分を役柄という檻に閉じ込めずに自分の気持ちに正直に生きるということが伝わってくる。
お気に入りキャラは羽卵・・・と思ったけどやっぱ鉄太郎で。
正直最初は、どうかなと思った。
羽卵が発端の「南校舎二階隅空き教室爆破貫通事件」とかは、ギャグテイストでもファンタジーでもなく、それなりにリアル描写が進むこのストリーからするとほんとに犯罪っぽくて、どうよと思わなくもなかった。アルミの融通の利かなさも腹が立つほど憎らしく描きこまれているのもちょっと嫌な気がした。・・・まあ、大会時のコスチュームをSM衣装にしたのは愛嬌としておきましょう。
しかし、読み進むにつれ、そのテンポのよさや各部員の内面の描写などがしっかりしているところが読んでいて違和感がなかった。なんというか、構成が絶妙なのだ。
私の感性にあったというとそれまでだが、ストーリーの間に差し込まれる各部員の描写(入部動機)は、ともすればストーリーをぶった切って台無しにするところだが、まったく邪魔にならず、かえってストーリーを深める役割がある。また、スポーツチャンバラの大会が始まってからからはストーリーが段違いにスピードアップするが、盛り上がりに欠けたり描写が薄くなるわけでもなく、むしろ中だるみがなくテンポの良い感じがした。
ちょっとずれただけでストーリーをぶち壊しにしそうなこのバランスが巧い作品だと思います。各キャラの設定が尖りすぎているのは著者のデビュー作ということで荒削り感だということにしましょう。また、アルミがどっちかというとヤンデレに走ってしまったのは著者の手から離れて暴走したという感じでしょうか。
まあ、応援したい著者がまた増えました。先々が楽しみな方がまたラノベ界に増えたのは嬉しいですね。


■今日の決めゼリフ

「先輩……関西弁、抜けましたね」(by 嶋谷鉄太郎)
好きだった音温先輩との電話口での会話。東京に行ってしまった音温から関西弁が抜けた…その意味するところに気づき、ひとつの区切りとなる鉄太郎の言葉。鉄太郎の心の区切りが目に見えるようで印象に残ったセリフです。鉄太郎が少しだけ大人になった瞬間ですね。こういう婉曲に読者に伝える表現にする著者が好きです。


ミシュランの星
:死ぬまでにあと1回読めばいいか…。
★★:普通に面白い。2年に1回再読したい。
★★★:結構面白い。1年に1回は再読したい。
★★★★:非常に面白い。やることないなら再読したい。
★★★★★:最高!聖書代わりに枕元に必携。