会長の切り札(ジョーカー) 一芸クラブに勝機あり!

■独断偏見ミシュラン:★★★★

「でたまかシリーズ」で著名な鷹見一幸氏の新作。
3つの町の合併に伴い、それぞれの町にあった高校が2つに統廃合されることになり、どの高校を存廃するかを生徒同士の勝負により決することになった。楢山高校の生徒会長のヒロインが一念発起し、戦いに望むとき、参謀役として活躍する主人公の物語。
まあ、要は町のイベントである合戦ごっこスポーツチャンバラを取り入れて攻城戦形式で戦争して勝敗を決めるという設定。そこに持ち込むまでの経緯も描かれているので、それほど無理はない。
ヒロイン朋絵の高校を残したいという強い意志。こういうのは、高校を卒業している人たちには共感できることは多いと思う。文武両道の対戦相手に対し、無気力の楢山高校の生徒たちをアジテージする朋絵の姿、その思いはとても心に染み入ってくる。
一方、朋絵の幼馴染の光明が軍師役として活躍するところは読み手としてはいろいろ意見は分かれるところかもしれない。
光明、軍師ということで、ミツアキでなくコウメイと読ませる意図もあるかもしれない。しかし、実際の光明は、かの諸葛孔明のように一人でアイディアを発想し、切り盛りするタイプ、いわゆるスーパーヒーロータイプではなく、周りの意見を取り入れ、調整し組み立てて戦術としていくタイプ。まあ、最後の逆転のための布石とかは光明が考えたにしろ。
そいうことで、光明って結局なんも思いついてない、なんて思うとちょっと楽しめない。しかし、有能な部下からいかに能力を引き出すか、そしてそれを使うだけの器量があるかというタイプの軍師として、とても魅力ある主人公なのではないかとも思う。
あと、光明は朋絵のためにあらゆる手段でもって楢山高校を残すつもりであるが、藍山の誘いに乗らないというまっすぐなところも持っているのが好感がもてる。
しかし、まあ、朋絵については愛校精神半分、統廃合になったら光明と離れ離れになるのが嫌だからという思いが半分だと思うのですが、どうでしょうかねぇ。
余談ですが、鷹見氏は水曜どうでしょうを見てるんですねぇ。どうバカとしてはうれしい限りです。(読めばわかります)


■今日の決めゼリフ

「ねえ、私、間違ってる?自分の高校が好きでその高校を残したくて、一生懸命になるって、馬鹿なことなの?そういう人間を、馬鹿じゃねえの?って冷ややかに見て、関係ねえよ、て顔をするのが正しいの?自分が力を貸して、一緒にやり遂げることより、力を貸さないで、その人たちが失敗するのをあざ笑うことの方が、クールでカッコイイの?
ねえ、教えて!こうやって、一緒にやろうって呼びかける方が間違ってるの?」(by早乙女朋絵)

決戦の日へ向けて特訓する生徒をあざ笑うかのように、関係ないと言って冷ややかに見据える、主に3年生たちへ向けての朋絵の呼びかけ。
自分の気持ちが伝わらぬもどかしさ、自分の高校を愛し行動する人がいないことへの悔しさがにじみ出て、人の心を打つセリフですね。


ミシュランの星
:死ぬまでにあと1回読めばいいか…。
★★:普通に面白い。2年に1回再読したい。
★★★:結構面白い。1年に1回は再読したい。
★★★★:非常に面白い。やることないなら再読したい。
★★★★★:最高!聖書代わりに枕元に必携。